ラグナロク!北欧神話の独自性について

北欧神話とは北ゲルマン民族、すなわちヴァイキングと呼ばれた人々の信仰に基づく神話のことです。「ラグナロク」神々も死に世界が滅びる、そんな極めて悲壮な終末観がそこにあります。

【1】北欧神話とは

北欧神話とは文字通り北欧に残された神話であり「エッダ(詩のエッダ・散文のエッダ)」にまとめられ現在に伝えられています。自然や運命に対する畏敬の念、そして荒々しくも詩的な世界観のなか、神々や英雄たちが運命に抗いながらも勇敢に生きる、そんな物語です。ここではその概要をまとめてみます。

1-1.北欧とはどこか

まず北欧神話で言う北欧とは、ノルウェー・スウェーデン・デンマーク・アイスランド・フェロー諸島を指します。

北欧というと一般的にはフィンランドもその一つですが、フィンランドは非ゲルマン系民族であるフィン人の国であり北欧神話とはまた違った神話が残されています。なのでここには含まれてはいません。

1-2.ヴァイキングとはどんな人々か

ヴァイキング(Viking)と言えば「角の生えたヘルメットを被った図体のデカい海賊たち」がイメージ出来ますね。ただその名称は商人も意味するのだとか。

彼らは本来は農民・漁民であり、高度な造船・航海技術をもって貿易をはじめとする商業活動も盛んであったそうです。彼らが活動していたのは8世紀から12世紀にかけてのことでした。日本では奈良から平安時代に当たります。その活動は各地の文化を融合させ、ヨーロッパ各国の形成に大きな影響を残しました。

前述した武装集団といったイメージが強調されるようになったのは、後世になってからのようです。

1-3.北欧神話に登場する種族

アース神族とヴァン神族

北欧神話には様々な種族が登場しますがその主役ともいえるのが、

 ・アース神族
 ・ヴァン神族

という二系統の神です。

まずアース神族とはアウズフムラの子孫であるボルと霜の巨人ベストラとの間に生まれたオーディンを最高神とする一族です。オーディンは最初の巨人ユミルを倒し、そしてその死体から天地創造を行ったことから万物の神とも称されます。自らの命を犠牲にしてルーン文字の秘術を得た偉大な神様です。

このアース神族は祭祀や法律、戦いなどを司る神々です。主な神様として雷神とも称される戦神トール、光の神であり白いアースとも呼ばれるヘイムダム、世界に光をもたらすバルドルなどがあげられます。

一方ニョルズを主神とするのがヴァン神族です。ニョルズは海運や商業の守護神としてもよく知られています。商業や財産、豊穣や愛欲を司る神々であり美・豊穣の女神であるフレイヤ、そしてフレイヤの双子の兄、これまた美男子として名高いであるフレイなどこの神族は美しい要望を備えていることも特徴です。

その他、アース神族と対立するのが巨人族でありここには霜の巨人、山の巨人、また炎の巨人など多種類が存在します。さらに妖精族、小人族などが登場します。

【2】北欧神話の独自性とは

北欧神話の特徴はその独自性にあるのですが、その要因をいくつかあげてみます。

2-1.キリスト教化の遅れ

ヨーロッパの多くの地域では4~6世紀までにキリスト教が浸透しましたが、北欧はキリスト教化が10~12世紀と後世になってから。そのため、ゲルマン的な自然崇拝・戦士的価値観が比較的長く維持され、神話も中世まで「生きた信仰」として存在していました。

2-2.自然信仰

北欧は極寒の地、その長い冬や氷河といった厳しい自然の脅威が神話に投影されており、海や氷・炎といった自然そのものを人格化した巨人や怪物が神々と対等に存在します。これは「神が唯一絶対で自然を従える」という一神教の世界観とは対をなすものです。

2-3.神々への共感

キリスト教では神は全能であり不滅です。しかし北欧神話の神々は死に運命づけられています。もちろん畏怖の対象であり超越的な存在である一方、北欧神話における神々は「死すべき運命を共に背負う仲間」といった共感や親近感をもたらせます。

2-4.ユグドラシルによって象徴される独自の世界・宇宙観

ユグドラシル(Yggdrasill)とは世界を支える大樹のことです。北欧神話では、この世界はユグドラシルによって繋がっている。そしてアース神族の住むアースガルズ、人間界ミズガルズ、巨人界ヨトゥンヘイム、死者の国ヘルヘイムなどの世界が枝や根によって結ばれている、とされています。

この世界を一つの樹で表現する宇宙観は、

 ・ユダヤ教・カバラの「生命の樹」
 ・マヤ文明の「セイバ」
 ・中国神話の「扶桑」
 ・古代メソポタミアの「聖なる樹」

など他の神話でも見られるのですが、北欧神話ほど具体的で多層的な体系を持つ例は少ないと言えます。

2-5.ラグナロク、悲壮な終末観

ラグナロク(Ragnarok)とは神々の黄昏、北欧神話における終末の日を意味します。北欧神話は「世界の終末」までを物語として描き切っているのです。神々も死に世界が滅びる、そんな極めて悲壮な終末観がそこにあります。

たとえばキリスト教における「最後の審判」とは復活したイエス・キリストが再臨し裁きを行い、神を信じ救いを求める者が永遠の生命を与えられる、いわゆる救済ですね。しかし北欧神話は救済よりも勇敢に運命に立ち向かう姿勢が強調されるのです。

ただし、破壊の後に「新しい世界が再生する」といった循環的な時間観を示していることにも注目できます。

【3】北欧神話の魅力とは

3-1.緊張感と儚さ

北欧神話の魅力はなんでしょう、簡単にまとめると、

 ・壮大な世界観と人間味ある神々
 ・自然と死生観を映す物語性
 ・幻想的で迫力あるイメージ

などでしょうか。

また北欧神話には「避けられない死」が繰り返し描かれます。神々ですら死から逃れられないのです。しかし、繰り返しますが循環的な時間観を示している点も見逃すことはできません。ラグナロクのあとには新しい世界が再生するとも語られているのですから。

 ・輪廻転生
 ・破壊と復活
 ・終わりと始まり

こういったテーマは私たちの人生と重なるもの。この「緊張感と儚さ」が放つ深い魅力にに心が強く惹きつけられるわけです。

以上、北欧神話の概要だけを簡単にまとめてみました。興味をお持ちになったのなら一読をおすすめします。

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