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神秘の象徴!タロットの起源とアートコレクションについて

占いとはまた異なる魅力もある。そんなタロットカードの一面を、起源や芸術性を通してまとめてみます。

【1】はじめに

1-1.ヨーロッパの文化史・精神史の結晶

タロットカードは占い専用のカードです。またそれぞれに描かれた象徴的な絵柄を理解するには知識も必要です。したがってタロットを「単なる占いのアイテム」と見ればそれまでです。しかし、ここで少し観点を変えてみませんか。

タロットは15世紀イタリアの貴族のカードゲームに端を発し、やがて神秘思想・カバラ・占星術などと融合して発展したもの。ヨーロッパの文化史・精神史の結晶であり、その一枚一枚には、神話・宗教・哲学・心理学などに通じる象徴(シンボル)が込められているのです。

またさらに特筆すべきはその芸術性でしょうか。ルネサンス風、アール・ヌーヴォー調、ゴシック、ファンタジー、動物モチーフなど、多くのデザインが存在し世界中のコレクターたちを魅了し続けてもいます。

象徴の世界への旅、占いとはまた異なる世界。そんなタロットカードの一面を、構成や由来、また芸術性を通してまとめてみます。

【2】タロットカードの構成

2-1.アルカナとは

タロット占いで使うカードは78枚でひと揃えとなります。そしてこのセットのことを「デッキ」ともいいます。ちなみにこの78枚のカードは、
 大(メジャー)アルカナ:22枚
 小(マイナー)アルカナ:56枚
で構成されています。

アルカナとはarcanaと綴るのですが、これはラテン語のarcanumの複数形であり、日本語に訳せば秘薬とか秘儀、秘密といった意味です。またこの78枚でワンセットとなったのは、今から約300年前と言われています。

大(メジャー)アルカナ22枚は絵札です。またその1枚1枚が独立した絵画のようにデザインされており、芸術作品としても楽しめます。クラシカルなものから幻想的・モダン・ポップカルチャー風まで作家の個性が色濃く出ることから、アートコレクションとしても人気です。

一方、小アルカナは数札10枚と人物札4枚が4つのスート(suits)に分かれ組を作っています。スートとはトランプにおける、クラブ・スペード・ハート・ダイヤと同じようなものです。


wands (batons)

swords
聖杯
cups
硬貨
coins (pentacles)
また、数札(pip cards)は1~10までの数字が表わされ、人物札(court cards)には、
小姓:page・騎士:knight・女王:queen・王:king
が描かれています。

小姓 page
騎士 knight
女王 queen
王 king

これまたトランプの、ジャック・クイーン・キングとよく似ていますね。こういったことから「トランプは小アルカナから派生したものである」と(またはその逆とも)説かれています。

ちなみにジョーカーとして加えられたのが、大アルカナの「愚者(the fool)」でしょう。

しかし、なぜこの大・小異なる二つをもって78枚の一つのデッキとなったのかは不明です。

【3】タロットカードの起源

タロットカードの発祥や由来については謎でありいくつかの説があるのですが、歴史的に確認できる範囲から整理してみます。

3-1.14~15世紀ヨーロッパ「tarocchi」

タロットカードの原型とされているのが15世紀イタリアで誕生した「トリオンフィ(tarocchi)」です。ただこのカードは占いではなく貴族間でゲームとして使われていたものです。

この歴史的なカードは現代的に再解釈され「トリオンフィ・デラ・ルナ・タロット」として販売されています。パトリック・ヴァレンザによるイラストは遊び心あふれるもの。月面顔のキャラクターたちが特徴であり、人間の深層心理や月の影響をユーモラスかつ神秘的に映し出しています。

またこの当時最古のタロットカードとして登場したのが「ヴィスコンティ=スフォルツァ版(Visconti Sforza Tarocchi)」です。絵柄には王・聖職者・運命の車輪・死神など象徴的イメージが描かれており、中世ヨーロッパの宗教観・哲学・宇宙観が深く反映されたもの。こちらも復刻版が販売されています、このデッキはぜひコレクションしたい、そんな逸品です。

3-2.18世紀フランス、古代の叡智の書

エジプト起源説

タロットカードが占いとして使われ始めたのが18世紀、フランスからです。特に神秘思想家たちがタロットを「古代の叡智の書」とみなし始めたことによります。そしてこの説を最初に唱えたのは、18世紀フランスの学者アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン(Antoine Court de Gebelin) です。

彼は1781年に出版された著書「原初世界(Le Monde Primitif)」の中で、「タロットこそ古代エジプトの神官たちが作った神秘の書であり、その知恵が密かにヨーロッパへ伝わったものである。」と説きました。

つまり、タロットの図像、太陽・月・運命の車輪・死神などはエジプトの宗教的象徴を継承したものであり、「人類の叡智の書(Book of Thoth/トートの書)」だとしたのです。

ちなみにトートの書とは、知識を司る神 (en)トートによって書かれたとされている文書のこと、宇宙と人間の秘密を記した魔術書と伝えられています。

「タロットの22枚の大アルカナは、トートの書の22章に対応している。」クール・ド・ジェブランはこう推察したのですが、のちにこの「22」という数が後の神秘思想家に大きな影響を与え、カバラの「22のヘブライ文字」とも関連づけられていくのでした。

エジプト起源説の影響

クール・ド・ジェブランの説に影響を受けたのが、世界初のプロ占い師とされるエッテイヤ(Etteilla:本名アリ=アリエット)です。彼はジェブランの理論をさらに発展させ、タロットを「エジプトの神秘体系」として体系化しました。

そして独自の「エジプト・タロット」を制作し、各カードに宇宙の法則や人間の運命を象徴させました。彼はタロットを「トートの書」の再現とみなし、占星術・四大元素・エジプト神話などを取り込んで解釈しています。

さらに19~20世紀の神秘主義者たちも強い影響を与えました。タロットをカバラや魔術体系と結びつけ「古代の叡智の象徴」と位置づけたのがエリファス・レヴィ(Eliphas Levi)。「トート・タロット」で、エジプトの神々(イシス・ホルス・トートなど)を再解釈したのが、アレイスター・クロウリー(Aleister Crowley)です。

ちなみにアレイスター・クロウリーは1875年生まれ、1944年タロットカードの解説書である「トートの書」の挿絵としてこのカードデザインを発表。その後クロウリーの死後「トートタロット」として出版されたものです。「エジプト起源説の再生」として話題になりました。

ただし、タロットと古代エジプトとの直接的なつながりを示す証拠はありません。しかしタロットを「単なる遊戯」から「神秘の書」へと昇華させた。また神秘思想(カバラ・錬金術・占星術)と結びつく契機になった。そんな象徴的価値を持ち象徴世界の扉を開いたもの、とも言えるでしょう。

3-3.オカルト的再解釈:19~20世紀

19世紀以降、タロットはカバラ、占星術、錬金術などの神秘思想と結びつきます。エリファス・レヴィ(Eliphas Levi)はタロットを「ユダヤ神秘主義(カバラ)」の生命の樹と関連づけ、大アルカナ22枚をヘブライ文字22文字に対応させました。

また、西洋魔術の体系の中でタロットを重要な象徴体系として再構築したのが黄金の夜明け団(The Hermetic Order of the Golden Dawn)であり、ここから「ライダー=ウェイト版」や「トート・タロット」など現代的デッキが生まれることとなったのです。

3-4.現代のタロット

そして現在、近代タロットの確立に至ったのですが、現在タロットの主流はライダー(ウェイト)版や前述したトート・タロットでしょうか。

ライダー版とは、アーサー・E・ウェイト博士が監修しパメラ・コールマン・スミスさんがイラストを担当したもの、「最も広く使われているデッキ」といっていいでしょう。

【4】コレクションとしてのデッキ

神秘的で美しく美術品としても価値のあるタロットデッキにはコレクターも多く、占いとは別にコレクションとしても楽しむことができます。

そんな中、ここではタロットの歴史を知る上でも欠かすことのできない、
 ヴィスコンティ版
 マルセイユ版
 ウェイト版
の三つからそれぞれ代表的、そしてとてもお洒落なデッキを6つ取り上げてみます。なお、ここで紹介したデッキはすべて複製版が販売されており入手可能です。

4-1.ヴィスコンティ版

ヴィスコンティとは中世イタリアにおける有力氏族であったビスコンティ家のことであり、同家のために作成されたタロットがビスコンティ版と呼ばれています。また、このヴィスコンティ版こそが前述の通り、タロット史上において現存する最古のデッキとして知られています。そしてそのバージョンは9つあるとされています。

★キャリー・イェール・パック Cary Yale Visconti Tarocchi Deck

「ヴィスコンティ版」の中でも有名なものがこの「キャリー・イェール・パック」です。大アルカナ11枚と小アルカナ56枚、計67枚が現存し、現在はアメリカのイェ-ル大学の稀覯本図書館に保存されています。

しかし小アルカナがなぜ64枚なのでしょう。
これは
「王」と「女王」に加え
 男性騎士
 女性騎士
 男性小姓
 女性小姓
このように騎士と小姓に女性の札が存在するからです。
したがって
 数字札10枚+人物札6枚=16枚
 16枚×4スート=64枚
となっているわけです。

この現存する67枚に欠損したカードを補い、大アルカナ22枚と小アルカナ64枚の合計86枚組のセットがU.s.Games社で複製され販売されています。

★ベルガモ・パック Bergamo Pack

次に紹介するのは同じビスコンティ版の中でも欠損も少なく完成度の高さから名高い「ベルガモ・パック」です。現在大アルカナ・小アルカナ合わせ74枚が、
ピエール・モルガン・ライブラリー(アメリカ)に35枚、アカダミア・カッラーラ美術館(イタリア)に26枚、コレオーニ家(イタリア)に13枚に分けられ保存されています。

作成推定年代は1450年といった説が有力です。これはキャリー・イェール・パックより後年になるのでは、とも言われています。こちらはイタリアのメイカーであるオスワルド・メネガッツィ氏によるハンドメイドの復刻版がよく知られています。

★シャルル6世のためのタロット Golden Tarot of The Renaissance

これまたとても有名な逸品ですね。フランス国立博物館に保存されている17枚のタロットです。

このタロットは長い間、フランス国王であった「シャルル6世のために作成されたタロット」であり、そして現存しない最古のタロットデッキであるとされてきました。しかしその後の調査により同デッキは、フランスではなく1400年代の中期から後期にかけイタリアで作成されたものと判明しました。

このフランス国立博物館に保管されている17枚のタロットに、新たに再現された5枚を加え蘇った22枚の大アルカナが「ゴールデン・タロット・オブ・ルネッサンス」です。こちらはイタリアのロ・スカラベオ社より販売されています。

イタリア北東部、エミリアロマーニャ州の都市フェラーラにあるスキファノイア宮殿のフレスコ画(壁画)をヒントに完成に至ったという22枚のカード。まさに稀に見る美しさであり、ファンからも絶賛されています。ぜひコレクションしたいものです。

4-2.マルセイユ版

マルセイユ版とは、やはりヴィスコンティ版から派生したタロットの一つです。フランスで創作された木版画ものであり、年代は1650年から1700年頃。いくつかのバージョンがあるのですが、ここでは代表的な3つを紹介します。

★ジーン・ノブレ Jean Noblet

製作年代は1650年頃、フランス国立博物館に保存されています。作者のジーン・ノブレはすぐれた彫刻家であり、ジャン・ノブレと表わされることもあります。

★ジャック・ヴィーヴル Jacques Vieville

こちらも製作年代は1650年頃、フランス国立博物館に保存されています。裏面の柄はマルタ十字、マルタ十字とはキリスト教の騎士修道会である聖ヨハネ騎士団(マルタ騎士団とも)の象徴とされるものです。

★ニコラス・コンヴァー Nicolas Conver

製作年代は1760年頃、その完成度の高さで長年ファンを魅了しています。ニコラス・コンヴァーはニコラ・コンヴェルとも表わされます。

4-3.ウェイト(ライダー)版

マルセイユ版と並び「もっともポピュラーなデッキ」がこのウェイト版です。おそらくあなたも一度は目にされているはず。このデッキの作者が、神秘思想家、魔術・心霊研究科であったアーサー・エドワード・ウェイト博士(1857~1942)。そして作画を担当したパメラ・コールマン・スミスさん。ウェイト博士とはどんな方なのか、また革命ともいわれたこのデッキの特徴について次に解説します。

【5】ウェイト版

5-1.魔術結社 Golden Dawn

博士はアメリカ人の父とイギリス人の母からアメリカで生まれ、幼少時に父親を亡くしてからはイギリスに移住。ロンドンでその生涯を送りました。大英博物館で研究に従事する傍ら、ゴールデン・ドーン(Golden Dawn)のメンバーでもありました。

ゴールデン・ドーンとはイギリスの魔術結社のことです、博士は魔術やシンポリズム(象徴主義)に関する著書を多く残しています。

またフリーメイソン(世界中の権力者や実力者が名を連ねているという秘密結社)などといった集団における体系の構築、さらにオカルティズムの分野における研究などに積極的に関わっています。

5-2.パメラ・コールマン・スミス Pamela Colman Smith

ウェイト版デッキは別名「ウェイト・スミス・デッキ」とも呼ばれています。それはこのデッキの作画を担当したパメラ・コールマン・スミスさん(1878-1951)にちなんでいます。

もちろん博士からの依頼であり、絵柄についても博士は詳しく指導を行っています。細部にわたりシンポリックな図形や文字が鮮やかに織り込まれたこのタロットが発表されたのが1910年のことでした。

またこのデッキはライダー社(Rider&Company)より発行されたのですが、ウェイト版はこの社の名にちなんで「ライダー版」とも呼ばれています。

5-3.描かれた生の姿

このウエイト版では硬貨(coins) の代わりにペンタクル(pentacles)が使われています。また大アルカナの「愚者(The Fool)」に、ゼロの番号を割り当てたのもこのウェイト版からです。

それから、小アルカナを見てください。人物と番号だけの絵柄ではなく生の姿が見事に描き込まれています。そのストーリー性を帯びたカードからはイマジネーションも沸き立ちます。

78枚のカードに見られる一貫性は革命とも称されるほど。一枚一枚に意味が込められたカードは占星術的な解釈すら可能であるとも言われています。

いかがでしょう、鑑賞にもよいのですがタロット占いに挑戦したければこれは定番です。ぜひそろえておきたいものです。

【6】さいごに

6-1.タロットとは直感との対話

同じモチーフから生まれたものではあっても、タロットほど作り手の個性が発揮されるものはありません。たとえ占いには興味はなくても、その一枚一枚を手に取って眺めてみてください。思想・哲学・宗教・歴史・神話・・・謎めいた物語が浮かんできます。

ちろんお気に入りのデッキを手に占いに挑戦してみるのもよし。タロットリーディングは決して難しいものではありません。

タロットとは直感との対話です。あなたが手にされたデッキはたぶんあなたとの相性もよし。なにかしらの縁があったはずだから。あなただけが聞くことができるメッセージに耳を傾けてみませんか。

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