神秘のアルファベット!ルーン文字の基礎知識
Contents
【1】ルーン文字とは何か
1-1.その成立について
ルーン文字とは何か、ひとことで言えば古代北欧で使用されていたアルファベットです。また神聖な意味を持つ文字でもあり、宗教儀式や呪術書などにも頻繁に使用されました。

ルーンは「Rune」と綴ります。これは古代ゴート(Gote)語で「秘密」とか「ささやき」といったといった意味を持ちます。また古代ゲルマン語においてルーンは「唸る」といった意味もあるそうです。ちなみにゴートとはゲルマン系の民族であり、東ゲルマン系に分類されるドイツ平原の古民族のことです。
ルーン文字はおよそ2世紀頃成立し、紀元400年頃を過ぎたころには文字として定着していたようです。その独特な形状は地中海世界のアルファベット(ラテン文字やエトルリア文字、ギリシア文字)の影響を受けたものと考えられています。
また交易や戦争を通じて南欧の文化に接触したゲルマン人が、既存の文字体系を参考にしつつ自分たちの言語に合った形に改造したもの、といった説もあります。
ただルーン文字の起源や成立についてはいまだ謎であり特定されてはいません。
1-2.神秘のアルファベット
ルーン文字は曲線や複雑な線のない象徴的な直線で構成されています。ためこれは岩や木や枝、また装飾品などにナイフなどを使って「彫る・刻む」ことが容易であったことにもよるようです。

ただこのルーン文字も後にラテン語の普及に伴い徐々に実用の座を失うこととなります。しかし、この一見記号のような文字古めかしい文字はそれぞれ独自の意味を持ち不思議な力が宿るものとされ、さらに神秘性を増したのです。
この文字を刻むと不思議な力が発揮されるとして武器や装身具、また石碑などに名前や言葉などが刻まれることも多く、権威の象徴や呪術的な守護の役割も果たしました。
秘密のささやきに隠された未来や真実・・・・、ルーン文字は石やカードを使い占いにも用いられてます。ルーン文字は魔術文字、まさに神秘のアルファベットと呼ぶにふさわしいものです。
【2】北欧神話とルーン文字
2-1.主神オーディン
ルーン文字の神秘性は北欧神話にも深く根ざしています。北欧神話ではルーン文字は主神であるオーディンが発見したものと記されています。
オーディンとはこの世を創造しただけではなく、戦いや死、また知恵や呪術などを司る北欧神話における最高神です。

叡智を得るための旅に出たオーディンは世界樹ユグドラシルで首を吊り自らの体を槍で貫きました。そして九日九晩苦しみに耐えた末ルーン文字を発見した。北欧神話ではだいたいこのように記されています。
ルーン文字の叡智を得るがために、自らを生贄とし苦行に耐えたオーディン。このような背景から、ルーン文字は単なる文字ではなく、神聖なるものとして崇められました。
ちなみにルーン文字の秘術をついに会得したオーディンはさらなる賢者となり、魔術や呪いを自在に発揮できるようになったのでした。
【3】フサルク(hupark)!ルーン文字の文字数
ルーン占いにおいては通常24文字と空白の石を一つ加えた25個のセットを使うのですが、最も古いとされているルーン文字は24文字で構成されています。ただ時代によってその文字数にはいくつかのバリエーションがあるのです。次にルーン文字の文字数について解説させていただきます。
3-1.ゲルマン型とアングロ・サクソン型
この文字数についても諸説あるのですが、まず古代ヨーロパにおいてはこの24文字のルーンが使用されていました。これがゲルマン型とか古代北欧型と称されるものです。やがて7~8世紀になると16文字となります、これがアングロ・サクソン型です。
3-2.アングロ・フリージア型
さらにイングランドやオランダにおいては8世紀前後28文字、さらに10世紀にはいると33文字へその数も増していきました。これがアングロ・フリージア型です。
3-3.変わらぬ6文字
このように時代の移り変わりによってバリエーションも変化を遂げたのですが、最初の6文字だけは変わることはありませんでした。この6文字からルーン文字のアルファベットは「フサルク(hupark)」 とも 呼ばれています。
3-4.エルダーフサルクとヤンガーフサルク
少しややっこしい話になってしまいましたが、初期における24文字のルーン文字がエルダーフサルクと呼ばれるものです。また文字数が減り16文字となった中世期のものはヤンガーフサルクとも言われています。
前述の通り、占いでよく使われるのがこのエルダーフサルク24文字に空白を一つ加えたものです。
【4】ルーン石碑(Runestones)
ルーン石碑(Runestones)はルーン文字文化の中で最も壮大かつ視覚的に残された遺産です。特にスカンジナビア(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー)を中心に数千基が発見されています。以下、代表的なものを地域別にご紹介します。

イェリング墳墓群 Jelling Mounds
デンマーク、1994年世界遺産登録。
ユトランド半島中部のイェリング近郊で発見された墳墓群。ルーン文字が刻まれた石碑にはデンマークの誕生当時の記録が残されています。
ビルカの石碑 Birka
スウェーデン、1993年文化遺産登録。
ヴァイキングの貿易拠点の一つであったビルカ、ゲルマン人が使用していたルーン文字の石碑や都市の城壁、また周囲には墳墓が2000基以上発見されました。発見された副葬品はビザンツ帝国の刺繍・フランク王国の宝飾品・中国のシルクなどから、その貿易圏の広さがわかります。
リンホルム・ホイエ Lindholm Hoje
デンマーク、オールボー近郊にある北欧最大級のバイキングの墳墓遺跡。その形が独特であり、三角形や楕円形、また船の形が見られます。世界遺産には登録はされていません。
ウプサラ大聖堂の石碑 Uppsala domkyrka
スウェーデン、ウプサラ大学の大学ホールとスウェーデンのウプサラ中心部にあるフィリス川の間にある大聖堂です。スカンディナヴィア諸国で最大級の教会建築であり、大聖堂の裏にはルーン石碑が集められています。世界遺産には登録はされていません。
ゴトランド島の石碑 Gotland
スウェーデン、絵画石碑が多く残されていることで有名です。戦死者をヴァルハラに集めるオーディンの姿、またヨルムンガンドを釣り上げるトールなど神話の絵などを見ることができます。この島の中心都市であるハンザ同盟都市ヴィスビューの歴史的な町並みは1995年にユネスコの文化遺産に登録されました。
【5】未知の単語「idiberug」とノルド祖言葉「hirila」
最後に、ここ数年ルーン文字に関するとても興味深い報道が二件なされましたので紹介します。
5-1.idiberug
2023年1月17日、オスロの北西に位置するティリフィヨルデンにて古代墓地発掘中、ルーン文字が刻まれた石碑が発見されました。
現場周辺で見つかった骨や木片から測定してみると、発見された文字は西暦およそ1~250年の間に刻まれたものだとか。今から約2000年前ですね。地元の記者の取材に対しルーン学者のクリステル・ツィルマー氏は以下の通り語りました。
「ノルウェーやスウェーデンで発見された石碑から、最古のものは西暦300年か400年に彫られたと考えられていた。しかし、これまで考えられていたよりも古いルーン石碑が存在することが分かった」(AFP通信より引用)
たぶん今まで発見された石碑の中でも、これが最古のものなのでしょう。石碑の大きさは約30センチ四方、文字は茶色い砂岩に刻まれています。
また刻まれたルーン文字をラテン語のアルファベットに置き換えてみると
「idiberug」
となったそうです。これは未知の単語であり、墓地に埋葬されている人物のことを指していると推測されました。
ルーン石碑の起源については謎に包まれたままなのですが、ノルウェーの文化史博物館はこの発見について、
「イエス・キリストの時代までさかのぼる可能性があり古代のルーン文字やその歴史を研究するルーン学者にとっての夢が実現した(AFP通信より)」
との見解を発表されています。
5-2.hirila
また2024年の1月、デンマーク中部オーデンセの東にある小規模な墓地から発見された小型ナイフには
「hirila」
といった5文字のルーン文字が刻まれていました。
ナイフは鉄製で紀元150年頃の物、そして文字が刻まれた年代は約2000年前。これもまた同国最古の文字であることが確認されたそうです
考古学者のヤコブ・ボンデ氏はAFPに「ナイフ自体は珍しい物ではないが、刃にはルーン文字が五つ書かれている。文字自体も珍しい発見だが、書かれた年代はデンマーク最古だった(AFP通信より)」と話しました。
この‘hirila’の5文字なのですが、これは当時使われていたノルド祖語で「小型ナイフ」を意味するそうです。これら報道からもわかるようにルーン文字の成立は2000年以上前のことなのでしょう。



